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寒くなって体を動かさなくなった人の股関節が急激に硬くなる仕組み

この記事の要点

* 股関節が硬くなる主な原因は、長く座り続けることと運動量の低下にある

* 腸腰筋やお尻の筋肉が硬くなることで、股関節の動く範囲が狭まっていく

* 寒さによる血管の収縮が重なり、冬は硬さが進みやすい時期にあたる

* 硬さを放置すると腰や膝への負担が増し、転倒のリスクにもつながる

* 立ち上がる動作を見直し、毎日少しずつ動かすことが対処の方向性

 

はじめに

立ち上がろうとした瞬間、脚の付け根がうまく動かない。

思わず手をついてしまった

 

——そんな経験を、この季節になってから増やしていらっしゃらないでしょうか。

寒さが本格化するこの時期、股関節の動かしにくさを訴えてお越しになる方が増えてきます。

 

ご本人は「寒いから」「冬はいつもこんなもの」とおっしゃることが多いのですが、

実際には数か月のあいだに硬さが進んでいることが少なくありません。

そして厄介なのは、硬くなっていく過程では痛みがほとんど出ないという点です。気づいたときには、

靴下を履く動作や階段を上る動作に支障が出ている。

そういう方が、毎年この時期にいらっしゃいます。

 

この記事では、寒くなって動く機会が減ったときに股関節で何が起きているのか、

そしてこの冬を少しでも快適に過ごすために今日から取り組めることをお伝えしていきます。

なお、強い痛みを伴う場合には医師の診察が必要なこともございますので、

その点についても触れさせていただきます。

 

床から立ち上がるときのあの一瞬に違和感の正体とは

 

立ち上がる瞬間、脚の付け根に引っかかるような感覚がある。

歩き出しの数歩がぎこちない。

靴下を履くときに前かがみになりづらい。

こうした変化には、股関節まわりで起きているある状態が関わっていると考えられています。

 

まず知っていただきたいのが、股関節を取り囲む筋肉の存在です。

股関節は大腿骨頭(だいたいこっとう・太ももの骨の上端部)と

寛骨臼(かんこつきゅう・その骨頭を受け止める骨盤のくぼみ)で構成される関節で、

上半身の体重を支え、下半身を動かす役割を担っています。

そしてこの関節の動きやすさを決めているのが、周囲の筋肉の柔らかさです。

 

なかでも大きく関わるのが、腸腰筋(ちょうようきん・腸骨筋と大腰筋などからなる、

背骨と骨盤と太ももの骨をつなぐ深部の筋肉)です。

この筋肉は脚を前に持ち上げる動作を担っており、

歩くときに膝を上げる動きをつかさどっています。

あわせて、大臀筋(だいでんきん・お尻の後ろ側の大きな筋肉)や

内転筋群(ないてんきんぐん・太ももの内側の筋肉群)も股関節の動きに関わっています。

 

長時間の座った姿勢や運動不足が続くと、これらの筋肉が緊張して硬くなり、

股関節の動きが制限されて痛みや不快感を引き起こすことがあるとされています。

座っている状態というのは、腸腰筋が縮んだまま固定されている状態です。

この時間が長く続くほど、筋肉は縮んだ形で硬くなっていきます。

 

立ち上がる瞬間の違和感というのは、

縮んで硬くなった筋肉を急に伸ばそうとしたときに生じていると考えられます。

つまりあの一瞬は、体が発している最初のサインなのです。

 

なお、立ち上がりや歩行で強い痛みが出る場合、

股関節そのものに別の問題が隠れていることもあります。

痛みが続くときは医師の診察を受けることをお勧めいたします。

 

寒いから仕方ないと思っていた体に起きていたこと

 

寒くなると外出が減り、家の中で過ごす時間が増える。

これは自然なことですし、無理に出歩く必要はありません。

ただ、その数か月のあいだに体で進んでいることを知っておいていただきたいのです。

 

運動不足が続くと股関節周辺の筋肉や靭帯が硬くなるとされています。

特にデスクワークが多い方や、車での移動が中心で歩く習慣がない方は、

股関節が硬くなり徐々に動く範囲が狭くなっていくと指摘されています。

冬というのは、多くの方がまさにこの状態に入る季節です。

 

ここに寒さが重なります。

人間の体は寒くなると体温を逃がさないよう血管を縮めるため、

筋肉への血のめぐりが落ちます。

血のめぐりが落ちた筋肉は硬く感じられやすくなり、

その状態で動かさない時間が続けば、硬さはさらに進んでいきます。

動かないことによる硬さと、寒さによる硬さ。

このふたつが重なるのが冬なのです。

 

そしてもうひとつ、見落とされやすい点があります。

長時間の座った姿勢や不活動は、足首や足裏の感覚を鈍らせることが指摘されています。

その結果、体のバランスをとる際に足首をうまく使えなくなり、

股関節まわりに負担が集中しやすくなるとされています。

つまり股関節が硬くなるというのは、股関節だけの問題ではなく、

体の使い方全体が変わってしまうことでもあるのです。

 

股関節の硬さを放っておくと、どうなるか。

股関節が十分に動かない分、その動きを腰や膝が肩代わりすることになります。

歩幅が狭くなり、階段の上り下りがつらくなる。

バランスを崩しやすくなり、転倒のリスクも高まります。

冬のあいだに進んだ硬さが、春以降の生活に影響してくるというのは、こういう経路をたどるためです。

 

なお、年齢だけで柔軟性が決まるわけではないとも言われています。

日常的に股関節を動かしている方は、60代70代でも高い柔軟性を保っている例が多くあるとされています。

逆に、若くても運動習慣がない方は硬くなりやすい傾向があります。

歳だから仕方ないという話ではないのです。

 

この冬を痛みなく過ごすために今日から始められること

ここからは、今日から取り組んでいただける具体的な方法をお伝えします。

無理に脚を大きく開くようなストレッチは、筋肉や関節に負担がかかり危険です。

あくまで気持ちよいと感じる範囲でおこなってください。

 

まず取り組んでいただきたいのが、腸腰筋をゆるめる動きです。

椅子に浅めに腰掛け、背筋を軽く伸ばした状態で、片方の足をゆっくり後ろに引きます。

太ももの前側から脚の付け根にかけて軽く伸びる感覚があれば十分です。

反動をつけず20秒から30秒そのまま保ち、左右それぞれ2回から3回おこなってください。

座ったままできますので、テレビを見ながらでも取り入れられます。

椅子に浅く座り片足を後ろに引いて脚の付け根を伸ばすストレッチ

 

次に、お尻の筋肉をほぐす動きです。

椅子に座った状態で右足首を左の太ももの上に乗せ、背筋を伸ばしたまま上体をゆっくり前に傾けます。

右のお尻の深いところが伸びる感覚があれば正しくできています。

20秒から30秒保ち、左右それぞれ2回から3回。

こちらも椅子に座ったままおこなえます。

椅子に座って足首を反対の太ももに乗せお尻を伸ばすストレッチ

 

足首の運動も取り入れてください。

椅子に座った状態で、かかとの上げ下げとつま先の上げ下げをそれぞれ20回ずつ。

足首や足裏の感覚が鈍ることが股関節への負担につながると指摘されていますので、

足元から整えることにも意味があります。

椅子に座ってかかとを上げ下げする運動

 

そして、日常動作そのものを見直していただきたいと思います。

立ち上がるときに手をついて済ませるのではなく、できる範囲で股関節を大きく動かして立ち上がる。

椅子に深く腰掛け、足を引いてから前傾して立つ。

この動作自体がひとつの運動になります。

 

座り方も重要です。

足を組む、片方に体重をかける、ソファに沈み込むといった姿勢は、股関節に偏った負担をかけます。

座るときは左右のお尻が均等に椅子に当たっているか意識してください。

あわせて、1時間に一度は立ち上がって数歩歩く習慣をつけていただきたいと思います。

連続して座る時間が長いほど硬さが進みやすいとされているためです。

 

 

入浴も有効です。

38度から40度のお湯に15分から20分浸かることで体が温まり、筋肉がゆるみやすくなります。

ストレッチは入浴後におこなうと、体が温まった状態で取り組めます。

 

まとめ

 

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

寒くなって股関節が硬くなるのは、気のせいでも、年齢だけのせいでもありません。

座る時間が増えて腸腰筋やお尻の筋肉が縮んだまま固まり、

そこに寒さによる血のめぐりの低下が重なる。

このふたつが同時に起きるのが冬だからです。

 

そして最もお伝えしたいのは、硬くなっていく過程ではほとんど痛みが出ないという点です。

痛みという警告がないまま進むからこそ、

春になって初めて「去年より動きにくい」と気づくことになります。

 

今日からできることとして、椅子に座ったままの腸腰筋とお尻のストレッチ、

足首の運動、立ち上がり方の見直し、1時間に一度は立つこと。

どれも大がかりな準備はいりません。

この冬のあいだ続けていただくことに意味があります。

 

ただし、お伝えしておかなければならないことがございます。

立ち上がるときや歩くときに強い痛みが出る場合、股関節に明らかな引っかかりを感じる場合、

左右差が大きい場合には、股関節そのものに別の問題が隠れていることがあります。

そうした場合はまず医師の診察を受けていただくことをお勧めいたします。

 

股関節は体の中心にあり、立つ、歩く、しゃがむといったあらゆる動作の土台となる関節です。

ここが動かなくなることは、生活の自由さそのものに関わってきます。

だからこそ、硬さが進んでしまう前の今の時期に、体を整えていただきたいと考えております。

 

当院では、体のバランスを整える施術と、硬くなった筋肉に働きかける施術をおこなっております。

痛みを伴わないやさしい施術を心がけております。

当院は完全予約制で、ご希望の日時にお取りできない場合もございます。

冬が本格化する前の今のうちに、ご予約をお取りいただければと思います。

 

Q1. 開脚ストレッチは股関節を柔らかくするのに効果がありますか?

A1. 無理な開脚はお勧めしません。

筋肉や関節に負担がかかり危険とされています。

股関節の硬さは腸腰筋(背骨と骨盤と太ももをつなぐ深部の筋肉)が関わっていることが多く、

まずはそこをゆるめる動きから始める方が安全です。

Q2. 股関節が硬いかどうか、自分で確かめる方法はありますか?

A2. あります。

仰向けで片膝を胸に引き寄せたとき、反対の脚が床から浮く場合は腸腰筋が硬い可能性があります。

また靴下を座って履けない、あぐらがかきにくいといった日常動作も目安になります。

Q3. ストレッチはいつおこなうのが適していますか?

A3. 入浴後が適しています。

体が温まり筋肉がゆるみやすい状態になっているためです。

朝起きてすぐは体が冷えて硬いため、動かす幅を小さくして慎重におこなってください。

毎日続けることが大切です。

 

(柔道整復師・はり師・きゅう師 森洋人 監修)
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