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はじめに
目が覚めて、さあ起きようと思った瞬間。膝と腰がまるで固まってしまったように動かず、ベッドの端まで移動するだけで一苦労する。そんな朝を、この時期になると繰り返していらっしゃるのではないでしょうか。
朝の冷え込みが厳しくなるこの季節、膝と腰のつらさを訴えてお越しになる高齢の方が増えてきます。
お話を伺っていると、多くの方が「冬だから仕方ない」「歳なのだから当たり前」とおっしゃいます。確かに季節と年齢は無関係ではありません。しかし、朝にだけ強く症状が出るのには、体の中で起きているはっきりとした理由があると考えられています。そして理由がわかれば、できることも見えてきます。
この記事では、冷え込んだ朝に膝と腰のつらさが強まる背景と、今夜から取り組んでいただける整え方についてお伝えします。なお、症状が長く続く場合には医師の診察が必要なこともありすので、その点についても後ほど触れさせていただきます。
冷え込んだ朝に起き上がるまでの時間がかかるようになっていませんか?

夜寝るときは特に何ともなかったのに、朝になると膝と腰が動かない。なぜ朝だけなのだろう、そう不思議に思われたことはないでしょうか。
ここには、睡眠中の体の状態が関わっていると考えられています。一晩中体を動かさずに寝ていると、関節のまわりの筋肉や腱、靭帯が硬くなりやすく、関節液の循環が悪くなります。これにより朝の関節はこわばりやすく、動かし始めたときに痛みを感じやすくなるとされています。
関節液とは、関節の中を満たしている潤滑油のような液体のことです。この液体は関節が動くことで全体に行き渡る性質があり、逆に動かない時間が長くなるほど行き渡りにくくなります。数時間じっと眠り続けた朝の関節は、潤滑油が届いていない状態になっていると考えられるわけです。
そこに寒さが加わります。人間の体は寒くなると体温を逃がさないように血管を縮める性質があり、これを血管収縮といいます。そうすると膝まわりの筋肉や関節包(かんせつほう・関節を包んでいる袋)に行く血のめぐりが減るため、筋肉や組織が硬く感じられ、重い、痛いと感じやすくなると考えられています。
つまり冷え込んだ朝というのは、動かなかったことによる硬さと、寒さによる血のめぐりの低下が重なるタイミングなのです。夏の朝と冬の朝で感じ方が違うのは、ここに理由があります。
また寒さは筋肉や腱、靭帯そのものをこわばらせるとも言われています。もともと膝や腰に負担を抱えている方ほど、この季節に症状が表に出やすくなる傾向があるようです。
なお、朝のこわばりが毎日長時間続く場合や、膝以外の手首や指など複数の関節に同時に症状が出る場合は、関節リウマチなど別の病気の可能性も考えられます。そうした場合は医師の診察を受けることをお勧めいたします。
安静にしていたことが招いていたかもしれないもの

痛いときは無理をせず安静にする。長年そうやって冬を乗り切ってこられた方は多いと思います。実際、強い痛みがあるときに無理をするのは避けるべきです。しかし、ここにひとつ考えていただきたいことがございます。
痛みを避けて動かない時間が長くなると、筋力の低下が進むことがあると指摘されています。活動量が減ることによる筋力の低下は膝まわりのだるさとして現れ、歩幅が狭くなる、転倒のリスクが増すといった形でつながっていくとされています。
ここで大切なのが、膝と腰を支えているのが筋肉だという点です。大腿四頭筋(だいたいしとうきん・太ももの前側の筋肉)は膝を支え、歩くときの衝撃を受け止める役割を担っています。腰まわりでは腸腰筋(ちょうようきん・腰と脚のつけ根をつなぐ深部の筋肉)や体幹の筋肉が、上半身の重さを支えています。これらの筋肉が落ちていくと、支える力が減った分だけ関節そのものへの負担が増していきます。
そして冬は、この悪循環が最も進みやすい季節です。寒いから外に出ない、痛いから動かない、動かないから筋力が落ちる、筋力が落ちるからさらに痛みを感じやすくなる。春になって暖かくなった頃に「去年より明らかに歩きにくい」と感じる方が少なくないのは、この数か月の積み重ねが関係していると考えられます。
誤解のないようにお伝えしますが、安静にすること自体が悪いのではありません。問題は、安静にする期間が必要以上に長くなってしまうことです。痛みが強い時期を過ぎたら、できる範囲で体を動かしていく。この切り替えのタイミングを逃してしまうことが、冬のあいだに起きやすいのです。
朝の膝腰の痛みを少しでも軽く迎えるために今夜からできること

ここからは、今夜から取り組んでいただける具体的な整え方をお伝えしましょう。無理のない範囲で、できそうなものから始めていただければと思います。
まず今夜から変えていただきたいのが、就寝前の温め方です。38度から40度のぬるめのお湯に15分から20分ほど浸かることで、体の深いところまで温まります。シャワーだけで済ませている方は、湯船に浸かる習慣を取り戻していただきたいと思います。入浴の際には膝と腰をお湯でしっかり温めることを意識してください。体が温まった状態で布団に入ると、冷え切った状態で眠るよりも朝の状態が違ってくると感じる方が多いようです。
就寝中の保温も大切です。寝室が冷え込む場合、布団の中は暖かくても肩や腰の上部が冷えていることがあります。腹巻きをする、膝にサポーターや薄手のレッグウォーマーを着ける、湯たんぽを足元に置くといった工夫で、夜のあいだの冷えを防ぐことができます。電気毛布を使う場合は、就寝前に布団を温めておき、眠るときには切るかごく弱めにするのがよいとされています。
そして、ぜひ試していただきたいのが布団の中でおこなう準備運動です。目が覚めてすぐに起き上がろうとするのではなく、横になったまま体を動かしてから起きる。これだけで朝のつらさが変わってくることがあります。
まず仰向けのまま、足首をゆっくり上下に動かします。つま先を手前に引いて、次に伸ばす。これを20回ほど繰り返してください。ふくらはぎの筋肉が動くことで、脚全体の血のめぐりが促されます。
次に膝の曲げ伸ばしです。仰向けのまま片方の膝をゆっくり胸に近づけ、また伸ばす。無理に深く曲げる必要はありません。動く範囲で構いませんので、左右それぞれ10回ずつおこなってください。関節を動かすことで、滞っていた関節液が行き渡りやすくなると考えられています。
腰まわりには、両膝を立てた状態でゆっくり左右に倒す動きが適しています。倒した側で5秒ほど止め、反対側へ。これを左右5回ずつ。痛みが出ない範囲でおこなってください。
これらを済ませてから起き上がると、いきなり動き出すよりも体が動かしやすくなるはずです。時間にして3分ほどのことですが、毎朝の積み重ねが変わってきます。
日中については、寒くても少しずつ体を動かす時間をつくっていただきたいと思います。外が寒ければ室内でも構いません。椅子に座った状態で膝を伸ばして5秒止める運動や、かかとの上げ下げといった動きでも、筋肉は使われます。冬のあいだに動かない時間が続くことが、春以降の状態に影響してくると考えられるためです。
まとめ
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。朝の冷え込みで膝と腰のつらさが強まるのは、気のせいでも、気力の問題でもありません。一晩動かさなかったことによる関節と筋肉の硬さ、そして寒さによる血のめぐりの低下。このふたつが重なる時間帯だからこそ、朝に症状が出やすいと考えられています。
そして、痛いから動かないという選択が、結果として筋力の低下を招き、翌年の状態に影響していくことがあるという点も、ぜひ心に留めておいていただきたいところです。
今夜からできることとして、湯船で体を温めること、就寝中の冷えを防ぐこと、朝は布団の中で足首と膝と腰を動かしてから起き上がること。まずはこのあたりから始めていただければと思います。
ただし、お伝えしておかなければならないことがございます。朝のこわばりが毎日長時間続く場合、膝以外の複数の関節にも症状が出ている場合、腫れや熱感を伴う場合、そして痛みが2週間以上続いている場合には、関節リウマチや変形性膝関節症など別の病気が関わっている可能性があります。そうした場合は、まず医師の診察を受けていただくことをお勧めいたします。
高齢の方にとって、冬のあいだ動けない時間が続くことは、その季節だけの問題にとどまりません。歩く力が落ちることは、その先の生活の自由に直結します。だからこそ、今のうちに体を整えていただきたいと考えております。
当院では、体のバランスを整える施術と、硬くなった筋肉に働きかける施術をおこなっております。痛みを伴わないやさしい施術を心がけておりますので、高齢の方にも安心してお受けいただけます。当院は完全予約制で、ご希望の日時にお取りできない場合もございます。冬が本格化する前の今のうちに、ご予約をお取りいただければと思います。
よくいただくご質問

Q1. 朝起きる前に布団の中でやる運動は、痛みがあってもやった方がいいですか?
A1. 痛みが出ない範囲でおこなってください。無理に動かすと症状が強まることがあります。動かす幅を小さくする、回数を減らすなど調整し、少しでも強い痛みを感じたら中止してください。腫れや熱感がある場合は控えましょう。
Q2. 膝や腰を温めるとき、使い捨てカイロでもいいですか?
A2. はい、使えます。ただし低温やけどに注意が必要です。肌に直接貼らず、衣類の上から使用してください。就寝中の使用は避けた方が安全です。感覚が鈍くなっている方は特に慎重にお使いください。
Q3. 膝と腰が同時に痛むのですが、関係があるのでしょうか?
A3. 関連していることがあります。膝をかばう歩き方が腰に負担をかけたり、逆に腰の状態が歩き方を変えて膝に影響することがあるためです。どちらか一方だけでなく、体全体を診てもらうことをお勧めします。



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