はじめに
病院でMRI検査を受けた後、医師から「椎間板ヘルニアですね」と告げられた瞬間、頭が真っ白になった。
そして次に聞こえてきたのは「手術をしましょう」という言葉。
「手術しか方法はないのだろうか」「仕事はどうなるのだろう」「もう元の生活には戻れないのだろうか」と、不安と恐怖に押しつぶされそうになっている方がいらっしゃるかもしれません。
京都市北区で治療院を営む森洋人と申します。
治療家として15年間で8万人以上の患者さまを治療させていただく中で、ヘルニアと診断されて手術を勧められ、不安を抱えて来院される方も診させていただいてきました。
「本当に手術が必要なのでしょうか」「他に方法はないのでしょうか」「このまま手術を受けて良いのか迷っています」といったご相談を受けたこともあります。
私自身も高校時代に野球で肩を痛めた経験があり、「もう二度と投げられないかもしれない」という絶望感を味わいました。
だからこそ、ヘルニアと診断された方の不安や恐怖が、どれほど大きなものか理解できるのです。
しかし、ここであなたにお伝えしたい重要な事実があります。
ヘルニアと診断されても、必ずしも手術が必要なわけではありません。
これは私個人の意見ではなく、世界中の医学研究によって証明されている科学的事実なのです。
今回は、ヘルニアと診断された時に知っておくべき正しい医学的情報と、手術を決断する前に冷静に考えていただきたいことを、治療の現場で培った経験と最新の研究データをもとに詳しくお伝えいたします。
この情報が、あなたの大切な判断の助けになれば幸いです。
ヘルニアと診断されて手術を勧められた時に冷静に考えるべきこと

ヘルニアと診断され手術を勧められた時、多くの方が動揺し、冷静な判断ができなくなります。
しかし、この段階でこそ、一度立ち止まって考えていただきたいことがあります。
まず理解していただきたいのは、ヘルニアの診断は「画像所見」であって「痛みの原因」ではないということです。
MRIやCTなどの画像検査でヘルニアが見つかったとしても、それが今あなたが感じている痛みやしびれの直接的な原因であるとは限りません。
これは非常に重要なポイントです。
医師は画像を見て「ここにヘルニアがあります」と説明しますが、それはあくまで「ヘルニアが存在する」という事実を述べているだけで、「そのヘルニアが痛みを引き起こしている」という証明ではないのです。
実際、2025年発表の多施設横断研究では、
「腰部症状がない200例の一時MRIで、椎間板ヘルニア(膨張隆起・突出・脱出などのいずれか)が30%に認められた」
と発表されています。
つまり、痛みがなくてもヘルニアは存在するのです。
手術を勧められた時に確認すべき重要なポイントがあります。
それは「緊急性があるかどうか」です。

ヘルニアで本当に緊急手術が必要なケースは、実はわずか10%〜20%程度しかありません。
具体的には、
・尿や便のコントロールができなくなる→膀胱直腸障害
・足に力が入らなくなり、日に日に悪化している→進行性の筋力低下
・複数の神経が圧迫されて重篤な症状が出ている→馬尾症候群
といった症状がある場合です。
これらの症状がなく、痛みやしびれだけの場合は、急いで手術を決める必要はありません。
また、セカンドオピニオンを求めることも非常に重要です。
一人の医師の意見だけで手術を決断するのではなく、複数の医師や治療家の意見を聞くことで、より客観的な判断ができます。
特に整形外科医だけでなく、保存療法を専門とする医師や、私たちのような治療家の意見も聞いてみることをお勧めします。
異なる視点からの意見を聞くことで、選択肢が広がる可能性があります。
手術にはリスクも伴います。
感染症のリスク、麻酔のリスク、神経損傷のリスク、そして再発のリスクがあります。
ヘルニアの手術後の再発率は約10%から15%と報告されています。
さらに、手術で物理的にヘルニアを取り除いても、痛みが完全に消えるとは限りません。
なぜなら、痛みの原因がヘルニアではなく、他の要因にある可能性があるからです。
ヘルニアと診断されても必ずしも手術が必要でない医学的な根拠

ヘルニアで手術が必要ないということは、決して根拠のない希望的観測ではありません。
世界中の医学研究によって証明されている科学的事実です。
ここでは、その医学的根拠を詳しくご説明いたします。
まず最も重要な事実として、ヘルニアの60%以上は自然に退縮(小さくなる、または消失する)することが、日本脊椎脊髄病学会の「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021」で明記されています。
さらに医学統計では、症候性腰椎椎間板ヘルニアの約80%が自然治癒するとされています。
つまり、何もしなくても、または適切な保存療法を行うことで、大多数のヘルニアは自然に良くなるのです。
この自然退縮のメカニズムも科学的に解明されています。
飛び出した髄核(椎間板の中心部のゼリー状の組織)が後縦靭帯を破ると、体はそれを「異物」として認識します。
すると免疫システムが働き、マクロファージ(白血球の一種)が動員されて、飛び出したヘルニアを分解・吸収していきます。
これは体が持つ自然治癒力の一つなのです。
特に脱出型や遊離型と呼ばれるタイプのヘルニアは、70%以上が自然吸収されることが報告されています。
自然治癒の期間についても研究データがあります。
3ヶ月以内に約25%から70%が吸収を開始し、6ヶ月で約半数が縮小、1年で約85%が症状改善するという報告があります。
つまり、少し時間をかければ、多くの場合は手術をしなくても改善する可能性が高いということです。
さらに重要なのは、長期的な予後(治療後の経過)において、手術療法と保存療法の間に差がないという研究結果です。
これもボルボ賞を受賞した信頼性の高い研究で明らかになっています。
短期的には手術の方が早く痛みが軽減する傾向がありますが、1年以上の長期で見ると、下肢痛の遺残(痛みが残ること)や復職率などに差がないのです。
つまり、急がずに保存療法を試しても、最終的な結果は手術と変わらないということです。
日本脊椎脊髄病学会のガイドラインでも、初期治療は保存療法が第一選択とされています。
約50%程度が保存療法のみで緩解(症状が和らぐこと)すると報告されており、薬物療法、理学療法、ブロック療法などを組み合わせることが推奨されています。
手術は、3ヶ月以上の保存療法で改善しない場合や、痛みが強く日常生活に著しい支障がある場合、または早期の社会復帰を強く望む場合の選択肢として位置づけられています。
画像所見と症状の不一致についても、多くの研究が報告しています。
MRI画像でヘルニアが見つかっても、それが必ずしも症状の原因ではないということは、先述のボルボ賞受賞論文だけでなく、他の多くの研究でも証明されています。
ある研究では、20歳代の健康な人の35%にヘルニアが見つかり、60歳以上では実に90%以上の人に何らかの椎間板の異常が見つかったと報告されています。
つまり、加齢とともに椎間板の変性やヘルニアは誰にでも起こる自然な変化であり、それ自体が必ずしも治療の対象ではないということです。
治療家として伝えたいヘルニアと診断された時の正しい判断基準

ヘルニアと診断された時、どのように判断し行動すべきか。
治療家として患者さまを診てきた経験から、正しい判断基準をお伝えいたします。
まず最も重要なのは「緊急性の有無」を見極めることです。
前述した膀胱直腸障害、進行性の筋力低下、馬尾症候群といった症状がある場合は、緊急手術が必要です。
これらは神経の重篤な障害を示すサインであり、放置すると回復不能な後遺症が残る可能性があります。
しかし、これらの症状がなく、痛みやしびれだけであれば、まずは保存療法を試す時間的余裕があります。
次に考えるべきは「保存療法を十分に試したか」ということです。
ガイドラインでは3ヶ月の保存療法が推奨されています。
保存療法には様々な選択肢があります。
薬物療法では消炎鎮痛剤や筋弛緩剤が使われます。
理学療法では適切な運動やストレッチが行われます。
ブロック注射は一時的に痛みを和らげる効果があります。
そして、私たちが行うような整体や鍼灸治療も、筋肉の緊張をほぐし、体のバランスを整えることで症状を改善させる効果があります。
重要なのは、これらの保存療法を「正しく、十分に」試すことです。
例えば、1週間だけ痛み止めを飲んで「効かなかった」と判断するのは早すぎます。
また、保険適用の整骨院での治療を受けて「保存療法では治らない」と結論づけるのも適切ではありません。
信頼できる治療家や医師のもとで、少なくとも2ヶ月から3ヶ月は継続的に治療を受けてみることをお勧めします。
判断基準として「日常生活への影響度」も考慮すべきです。

痛みがあっても日常生活や仕事が何とか続けられる程度であれば、保存療法を継続する価値があります。
一方、痛みで全く眠れない、仕事に行けない、日常生活が著しく制限されているという場合は、手術を検討する理由になり得ます。
ただし、その場合でも他の保存療法の選択肢を十分に検討した上での判断が望ましいです。
「症状の経過」も重要な判断材料です。
症状が日に日に悪化している場合と、横ばいまたは少しずつ改善している場合では、判断が異なります。
悪化している場合は早めに専門家に相談すべきですが、横ばいや改善傾向であれば、もう少し保存療法を続けてみる価値があります。
ヘルニアの自然退縮には数ヶ月かかることが多いため、焦らず経過を見ることも大切です。
セカンドオピニオン、さらにはサードオピニオンを求めることも強くお勧めします。

手術を勧める整形外科医だけでなく、保存療法を専門とする医師、理学療法士、鍼灸師、柔道整復師など、様々な専門家の意見を聞いてください。
それぞれの専門家が異なる視点から症状を評価し、異なるアプローチを提案してくれます。
その中から、あなたにとって最も納得できる方法を選択すればよいのです。
私が患者さまに必ずお伝えしているのは「手術はいつでもできる」ということです。
保存療法を3ヶ月試して効果がなかった場合、その時点で手術を選択しても遅くはありません。
緊急性のない症状であれば、保存療法を試す時間的余裕は十分にあります。
しかし、一度手術をしてしまうと、元には戻せません。
だからこそ、まずは体への侵襲が少ない保存療法から始めることが、賢明な選択だと考えています。
当院では、丁寧な問診と検査により、ヘルニアと診断された方の痛みの本当の原因を探ります。
多くの場合、画像で見つかったヘルニアではなく、筋肉の緊張や体の歪みが痛みの主な原因であることがわかります。
そして、その原因に対して適切な治療を行うことで、手術をせずに症状が改善するケースを数多く経験してきました。
まとめ
結論として、ヘルニアと診断されて手術を勧められても、決して絶望する必要はありません。
医学的な事実として、ヘルニアの60%以上は自然に退縮し、約80%は自然治癒します。
そして、長期的には保存療法と手術療法の結果に差がないことも証明されています。
緊急性のある症状(膀胱直腸障害、進行性筋力低下、馬尾症候群)がない限り、まずは保存療法を十分に試すことが賢明な選択です。
薬物療法、理学療法、ブロック療法、そして整体や鍼灸治療など、様々な選択肢があります。
手術はいつでもできますが、一度手術をすると元には戻せません。
だからこそ、まずは体への侵襲が少ない方法から試すべきなのです。
ただし、これらの保存療法を試しても症状が改善しない場合、痛みが日常生活に著しい支障をきたしている場合、または症状が進行している場合は、再度専門家に相談することが重要です。
痛みの原因がヘルニアではなく、他の疾患である可能性もあります。
また、体の歪みや筋肉のアンバランスが根本的な原因として隠れている場合もあります。
そのような場合は、一人で悩まず早めに信頼できる治療家や医師にご相談いただくことをお勧めいたします。
当院では丁寧な問診と検査により、あなたの症状の根本原因を探り出し、一人ひとりに合わせた治療プランをご提案しております。
画像所見だけに頼らず、実際の症状と体の状態を総合的に評価し、手術以外の選択肢を真剣に検討いたします。
ヘルニアと診断されても諦める必要はありません。
正しい情報と適切な治療により、手術をせずに快適な生活を取り戻せる可能性は十分にあります。
まずは冷静に、そして前向きに、あなたに最適な治療法を一緒に探していきましょう。
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(柔道整復師・鍼灸師 森洋人 監修)



