野球肩・野球肘の原因

投球動作による肩、肘の痛みでお悩みの方へ

院長 森洋人

投球動作を繰り返すことにより肩や肘に痛みを生じてしまうものを投球障害といいます。(野球肩、野球肘など)投球動作だけではなくテニスやバトミントン、バレーボールなどのオーバーヘッドスポーツでも同じようなメカニズムで痛めてしまいます。

私自身も野球肩を経験し「何で痛いんだろう?」「何で悪くなってしまったんだろう?」とその原因がわからずに悔しい思いをしました。今、頑張っている選手には同じ思いをしてほしくはありません。

原因を知りそして理解することで初めて効果的なトレーニング、ストレッチ、フォームの改善を行うことができるのです。学ぶことも練習です。そう思える選手こそ次のステージに進めるのではないでしょうか。

まずは投球動作とはどのようなものかを簡単にご説明いたします。

投球動作とは?

投球動作とは「下肢のエネルギーが体幹から投球側上肢へ伝えられ最後にボールに力を伝へる運動」だと私は考えています。

下肢から体幹、体幹から上肢へとタイミングよくスムーズに力が伝わると効率よく投球ができるということです。しかし体の開きや、肘下がりなどスムーズに力が伝わらないと球速の低下や、投球障害の原因になります。そこでまずは、投球動作とはどのようなものかを簡単にご説明いたします。

投球動作は5層に分けられる

投球動作は、

  1. ワインドアップ
  2. 早期コッキング
  3. 後期コッキング
  4. 加速期
  5. フォロースルー
5層に分かれる投球動作

の5層に分かれます。

ワインドアップは個人差があるので除いて考えると、投球動作はわずか1.6~2.0秒といわれています。この層の中で最も痛みを生じやすいといわれているのが[3]の後期コッキングと[4]の加速期です。

▽3.後期コッキング期コッキング期
▽4.加速期加速期

では一体なぜ野球肩や野球肘のような障害が起こるか?原因は大きく分けて2つあると考えています。

投球障害の2つの原因

【原因1】投げすぎ

肩や肘は消耗品ですので、プロ野球選手のようなフォームや筋力、柔軟性をもってしても投げすぎてしまえば痛めてしまいます。しかも少年期は成人と違い骨も筋肉も未発達です。当然投げすぎてしまえば痛みの原因になりますし、さらに不良な投球フォームならなおさらです。

少年期は筋力や体力作りよりも体の使い方を学ぶことが大切です。体の使い方とは野球だけで学ぶのではなく、他のスポーツを経験したり遊びの中で身につけることも大切です。

【原因2】不良な投球フォーム

代表的な悪い投球動作としては「早い体の開き」「膝割れ」「肘下がり」「内旋投げ」「上体の突っ込み」などがあげられます。

「肘を上げろ!」と指導されたことはありませんか?

私も今まで野球をしてきた中でこのような指導をよく耳にしました。しかしそう言われて本当にスムーズに肘があげられるようになるのでしょうか?

残念ながら意識ひとつで投球動作を変えることは困難です。投球動作はわずか2秒ほど。そのわずか2秒の間に「開きを抑えて肘を上げて…」なんて考えることは残念ながら大変難しいでしょう。

しかも痛みの発生しやすい「加速期」の時間は0.3秒ほど。意識ひとつでどうにかするなんてもはや不可能です。投球動作を改善するためには、なぜ不良な投球動作になったのか?その理由を考えなければなりません。

不良な投球フォームの2つの原因

肩甲骨の動き

肩甲骨の動きとしては、肩甲骨の引き寄せと、上方回旋(肩を最大挙上した時に肩甲骨は120度ほど上方回旋します)、さらに上腕骨に対して適切な位置関係を保てているか?という点も重要です。

肩甲骨が自由に動くためには、背骨や胸郭(肋骨)が柔軟である必要があります。肩甲骨の機能が十分に果たせないと、肘が下がったり、腕を引きすぎてしまいます。その状態で投げすぎると肩関節に過剰なストレスがかかり損傷してしまいます。

股関節の働き

股関節の働きは肩甲骨以上に大切かもしれません。股関節の動きが硬いと重心移動が不十分になり「早い開き」や「膝割れ」の原因になります。お尻や下肢の筋力がしっかり働きつつ十分な股関節の可動域が保たれることで力が十分に体幹から上肢へ伝わります。

「早い開き」「肘下がり」

不良な投球動作の代表といえばやはり早い開きと肘下がりではないでしょうか。肩甲骨や股関節の使い方が不良な投球動作の原因ということはお分かりいただけたと思います。今度は不良な投球動作の代表であるこの2つの動作についてもう少し詳しくご説明いたします。

早い開きの原因とは?

早い開きの原因は股関節の使い方、骨盤の傾き、体幹の傾き、重心移動での膝の使い方、軸足、ステップ足の安定性など原因は様々ですが、多くはワインドアップ期に原因があります。ある投球段階で問題が生じた場合、原因はその段階にあるのではなく「問題が生じた前の段階」にあります。問題の発生した段階の前の段階での体の使い方を変化させることが大切です。

つまりコッキング期で痛みを生じた場合、その前の段階であるワインドアップ問題があるということです。

▽左:良い例 右:悪い例悪い投球フォーム
▽左:良い例 右:悪い例悪い投球フォーム

肘下がりの原因とは?

私は肘下がりの原因はよっぽど肩関節や肩甲骨の動きが硬くない限り「体の早い開き」が原因だと考えています。早期の開きを改善出来れば肘下がりを防ぐことができます。

ちなみにみなさんは「開き」と聞くとどのような状態を想像しますか?実は「開き」には4パターン程あります。

  1. 骨盤が早く投球方向を向いてしまう「骨盤の開き」
  2. 踏み込み足の「アウトステップ」
  3. 踏み込み足(ステップ)のタイミングで骨盤とともに上体も投球方向を向く「上体の開き」
  4. 肘が上がりきる前に上体が回転する「上体の突っ込み」

当院で治療を行うピッチャーはこれくらいイメージでき、そして改善できるようになってもらいます。

▽左:正常 右:上体の突っ込み、早期の開き左:正常 右:上体の突っ込み、早期の開き
▽代償動作での負担が蓄積することによって障害が発生する代償動作

肘は上げるのではなく「上げられる」Lagging back現象

Lagging back現象

体の使い方がうまくいくと肘は勝手に上がるようになります。これをLagging back現象(後方遅延現象)といいます。下肢や体幹が先行して動くことによって、ボールを持った腕が遅れるということです。

釣り竿で遠くにリリースする際に竿が後ろにしなるのと同じ現象です。

釣り竿が大きくしなると遠くにリリースできるのと同じで、身体も大きくしなることで速く強い球が投げられます。このLagging back現象をうまく引き出すためには下半身の使い方、体幹の可動域、上肢の安定性や可動域が必要になります。

野球肩・野球肘でお悩みの方は今すぐご予約を

ご予約はお早めに

投球障害の治療ではまず損傷している部位を正確に診断・治療することが大切です。そのために当院では投球障害専門の検査や評価を行います。それにより損傷部位を正確に判断できれば鍼灸治療や整体治療などで「今ある痛みをより早く」改善することができます。

しかしそれだけでは投球障害の根本的な改善は難しいでしょう。なぜなら筋肉や関節の状態を改善できても、柔軟性や筋力、投球フォームなどの根本的な問題が解決しなければ多くの場合再発してしまうからです。

当院では身体の機能を高め投球動作の改善を行うことで「痛みの出にくい体作り」そして「痛めた前の状態よりさらにパフォーマンスアップすること」を目指します。つまり痛みの改善だけでなく再発予防や球速やコントロール、ボールのキレを良くすることを目標としています。

投げられなくつらい時期もあるかもしれませんが、さらなるレベルアップと思い治療に取り組んでいただけたらと思います。当院では治療から、投球動作の改善、予防法まで専門的な知識をもって指導させていただきますので野球肩、野球肘でお悩みの方、さらなるパフォーマンスアップを目指したい方は今すぐお電話ください。

(柔道整復師・鍼灸師 森洋人 監修)