皆さんこんにちは。
もり鍼灸整骨院 院長の森です。
今回は、腕の痛みやしびれといった症状の原因と改善方法について解説いたします。
じっとしているだけなのに腕が重だるくて痛く感じたり、つり革を持つ、腕を上に上げる作業、ドライヤーで髪を乾かすといった日常動作で肩や腕が痛く重だるく感じることはありませんか?
このような症状があり、肩こりや首こりが原因だと考えてストレッチやマッサージを行ってもなかなか改善しない場合、別の原因が潜んでいる可能性があります。
当院にもそのような患者様からのご相談を多数いただいております。
目次
腕の症状の意外な原因
実際には、腕の重だるさや痛みといった症状は、肩こりや首こりが原因でないケースがあります。
その症状を引き起こしている原因として考えられるのが「胸郭出口症候群」です。
この症候群が腕の症状の原因になっている可能性があります。
胸郭出口症候群とは?
胸郭出口症候群とは、首から腕に向かっている神経や血管が、首の筋肉や鎖骨、胸の筋肉などによって圧迫され、神経や血流が阻害されることで起こる症状です。
圧迫を受けている部位ではなく、そこから関連する腕の方に症状が現れるのが特徴です。
臨床的に最も多く見られるのが、斜角筋という筋肉が関連しているケースです。
首の前外側にあるこの筋肉が、神経や血管に影響を及ぼしていることが多く確認されています。
頸椎ヘルニアとの判別が重要
手のしびれを引き起こす症状には、もう一つ大きな要因があります。
それが頸椎ヘルニアです。
頸椎ヘルニアも胸郭出口症候群と似たような症状(腕の痛みや手のしびれ)を引き起こします。
この二つの症状の判別は非常に重要で、個人での判断は困難なため、整形外科や病院でしっかりとした診断を受けることをお勧めします。
ただし、病院では胸郭出口症候群という診断がつかないケースも多く見られます。
しかし、臨床的な症状から判断すると胸郭出口症候群の可能性が高いケースが多数存在します。
ヘルニアが否定された場合は、胸郭出口症候群の可能性を考慮した治療を検討することが有効です。
症状の違いを見極めるポイント
・胸郭出口症候群の場合
肩や腕全体にしんどさ、痛み、だるさなどの症状が現れることが多く見られます。
・頸椎ヘルニアの場合
指先やデルマトーム(神経が支配する特定の領域)に限局した痛みやしびれが出現することが多いです。
また、頸椎ヘルニアでは首の動きに伴ってしびれが強くなる特徴があります。
常時しびれを感じていても、上を向いたり首を横に倒したりするとビリビリとした強い痛みが走ります。
ヘルニアは急性の炎症症状に近いため、神経に刺激を与えると急激で強い痛みが生じるケースがあります。
一方で胸郭出口症候群は、じわじわとした慢性的な症状が特徴的です。
首を動かしても激烈な痛みは出にくく、むしろ腕を上げているとしばらくしてからだるくなってくるような鈍い症状を引き起こします。
なぜ胸郭出口症候群になるのか?
胸郭出口症候群の主な原因は、姿勢の悪化による筋肉への負担の増加です。
デスクワークや腕を多用する作業により、斜角筋という筋肉が硬くなってしまい、神経や血管に影響を及ぼすケースが多く見られます。
腕の重量は意外に重く、1本あたり3〜4kg、成人男性では5kg程度になります。
腕を自然に下ろしているだけでも、肩回りの筋肉や首の筋肉は常に緊張状態にあり、継続的に働いています。
肩回り、特に首の斜角筋が疲労して硬くなってしまうと、腕を支持することが困難になります。
支持機能が低下すると腕が下方に引き伸ばされ、それに伴って神経も引き伸ばされます。
このストレスが腕のしびれやだるさを引き起こしていると考えられます。
セルフケアが困難な理由
胸郭出口症候群に対する有効なセルフケアは、残念ながら非常に限られています。
一般的にストレッチなどが紹介されることがありますが、実際の効果は限定的なケースが多いのが現状です。
その理由として、疲労して機能が低下している筋肉に対してストレッチや引っ張りを行うと、さらに筋肉の疲労が増加し、症状が悪化する可能性があります。
また、首は神経が密集している非常にデリケートな部位です。
神経症状を呈している状態で、神経周囲の筋肉に対してマッサージやストレッチを行うことは、症状の悪化やリスクを伴う可能性があります。
そのため、胸郭出口症候群については専門的な治療を受けることが改善への最も確実な道となります。
治療に向けて、まずはお近くの病院や治療院を探してみてください。
「胸郭出口症候群」というキーワードで検索し、この症状の治療を専門的に行っている医療機関を見つけてご相談されることをお勧めします。
当院での治療アプローチから
当院では、硬くなった筋肉を緩めることを主軸とした治療を行っています。
硬くなった筋肉を緩める際に、一般的なストレッチやマッサージを行うと神経を刺激し、症状が悪化する場合があります。
そのため、当院では筋肉への刺激と負担を最小限に抑えた治療法を採用しています。
・主な治療法
鍼治療:筋肉への負担を最小限に抑えながら、効果的に筋肉を緩める治療法
特殊電気治療:筋肉を緩める効果のある特殊な電気治療機器を使用
整体治療:神経を刺激する悪い姿勢を改善するための治療
これらの局所的な筋肉治療と並行して、根本原因である姿勢の改善にも取り組みます。
治療効果と改善の見込み
私の臨床経験では、多くのケースでこれらの治療により症状の改善が見られています。
ただし、症状が長期化している方については改善までに時間を要する場合がありますが、適切な治療を継続することで良好な結果を得られることが多いです。
胸郭出口症候群は放置していても自然治癒が困難な症状のため、長期間お悩みの方が多く見られます。
しかし、適切な治療により改善できる可能性は非常に高いため、諦めずに治療を受けていただきたいと思います。
ただし、先天的に一般的でない骨の構造を持つ方や、生まれつきの骨格的要因が影響している場合は、改善が困難なケースもあります。
症状が改善可能なものか判断が難しい場合については、病院や当院での詳細な検査と評価により、最適な治療方針を決定することが重要です。
簡単な判別方法
胸郭出口症候群かどうかの判断は、比較的簡単な方法で行うことができます。
頸椎ヘルニアとの判別は専門的な知識が必要ですが、胸郭出口症候群には特徴的な所見があります。
・検査方法
①腕を横に開いて後ろに動かす
②この姿勢で手首の脈を確認する
③腕を下ろしている時には脈が触れるが、上記の姿勢を取ると脈が止まるか弱くなる
④さらに首を腕と反対方向に向けると脈がより弱くなる
この現象が起こる理由は、特定の姿勢により首の神経や血管が緊張し、圧迫を受けるためです。
その結果、腕への血流が阻害され脈が弱くなったり、腕に強いだるさを感じたりします。
この状態で手をグーパーと開閉すると、正常な側と比べて手が白くなるという所見も確認できます。
このような特徴的な所見により、比較的容易に診断が可能です。
ただ、適切な治療を行うとこれらの症状が改善していきます。
この改善過程を確認することで、治療効果の判定も可能となります。
まとめ
いかがでしたか。
今回は、腕の重だるさや痛みを引き起こす胸郭出口症候群について詳しく解説いたしました。
この症状でお悩みの方は決して少なくありません。
適切な診断と治療により症状の改善が期待できますので、お一人で悩まずに専門的な治療を受けることをお勧めします。
もし腕の重だるさや痛みでお悩みの方は、ぜひ当院までご相談ください。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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(柔道整復師・鍼灸師 森洋人 監修)