はじめに

冬休みが始まって数日、気がつくとずっとキッチンに立ちっぱなし。
朝昼晩の三食に加えておやつの準備、食器洗い、片付け。
子どもたちが家にいる時間が長くなると、掃除の回数も増え、洗濯物の量も倍増します。
そして夕方になると、肩から首にかけてのずっしりとした重み。
「あれ、こんなに肩が凝ったのはいつぶりだろう」と思わず肩を回してみても、なかなかスッキリしない。
冬休みの時期になると肩こりを訴えるお母様方が増えます。
そういう方からは、「子どもが家にいると休む暇がない」「料理や掃除の量が増えて肩がパンパン」「マッサージに行く時間もない」といったお声をお聞きしています。
実は冬休み中に家事が増えることによる肩こりには、単なる疲労だけでない複数の要因が関係しています。
長時間の立ち仕事、前かがみの姿勢、同じ動作の繰り返し、そして休憩時間の不足など、様々な要素が重なって肩への負担を増大させているのです。
しかし、たった5分のケアを家事の合間に取り入れるだけで、肩こりを大幅に軽減できる方法があります。
忙しいお母様方にこそ知っていただきたい、効果的で簡単な肩こり解消法を、今回は治療の現場で培った知識をもとにお伝えいたします。
冬休みに家事が増えた時の肩こりの初期症状とは

冬休み中の家事増加による肩こりは、多くの方が気づかないうちに進行していきます。
初期の段階で適切に対処することで、症状の悪化を防ぐことができますので、まずはサインを見逃さないことが大切です。
最初に現れる症状は「なんとなく重い」という漠然とした違和感です。
この段階では痛みというより、肩から首にかけて何かが乗っているような感覚です。
夕方になると特に感じやすく、「今日は疲れたな」程度に考えて見過ごしてしまう方が多いのですが、これこそが肩こりの初期サインなのです。
このタイミングで適切なケアをすれば、症状の進行を防ぐことができます。
次の段階として現れるのが「肩を回すとゴリゴリと音がする」「首を左右に動かしにくい」といった症状です。
これは僧帽筋上部線維(首の付け根から肩にかけての筋肉)や肩甲挙筋(首の横から肩甲骨につながる筋肉)が硬くなり始めているサインです。
朝起きた時に首が動かしにくい、振り向く動作がしづらいと感じたら、すでに筋肉の緊張が進んでいる状態です。
肩甲骨周りの張り感も重要なサインです。
背中の肩甲骨と肩甲骨の間が突っ張る、深呼吸をすると背中が伸びにくいと感じる場合、菱形筋(肩甲骨の間の筋肉)や僧帽筋中部線維(肩甲骨周囲の筋肉)に疲労が蓄積しています。
この部分の筋肉が硬くなると、肩全体の動きが制限され、さらに肩こりが悪化する悪循環に陥ります。
頭痛や目の疲れを伴うケースも少なくありません。

肩や首の筋肉が緊張すると、頭部への血流が悪化し、緊張型頭痛を引き起こします。
特に後頭部から側頭部にかけての重い痛み、締め付けられるような痛みは、肩こりが原因である可能性が高いです。
また、目の奥が重い、まぶたが重く感じるといった症状も、首肩の筋肉の緊張が影響していることがあります。
腕のだるさやしびれを感じる場合もあります。
肩こりが進行すると、鎖骨周辺の筋肉が硬くなり、腕への血流や神経を圧迫することがあります。
腕が重く感じる、手先が冷たい、軽いしびれを感じるといった症状が出たら、肩こりがかなり進行しているサインです。
睡眠の質の低下も見逃せません。

肩や首が凝っていると、寝返りの際に痛みや不快感で目が覚めたり、朝起きた時に「よく眠れなかった」と感じたりします。
睡眠中に筋肉が十分に休まらないため、翌朝も疲労が残り、さらに肩こりが悪化するという悪循環に陥るのです。
料理や掃除などの家事が肩の負担になるメカニズムとは

日常の家事動作が肩に与える負担は、多くの方が想像する以上に大きなものです。
それぞれの動作がどのように肩こりを引き起こすのか、そのメカニズムを詳しく理解することで、効果的な予防につながります。
まず料理中の姿勢について考えてみましょう。
キッチンでの作業は、ほとんどが前かがみの姿勢で行われます。
野菜を切る、フライパンを振る、食器を洗うといった動作では、体を前に傾け、腕を前に伸ばした状態を維持します。
この姿勢では、頭部が前に突き出し、約5キログラムある頭の重さを首と肩の筋肉だけで支えなければなりません。
前かがみの角度が大きくなるほど、首肩への負担は増大し、30度前傾すると首への負荷は約18キログラムにもなると言われています。
長時間の立ち仕事も肩こりの大きな要因です。
立っている状態では、体を支えるために全身の筋肉が常に働いています。
特に姿勢を保つための脊柱起立筋(背骨に沿った筋肉)や、肩を安定させる僧帽筋(首から背中にかけての大きな筋肉)は、休むことなく緊張し続けます。
キッチンに1時間、2時間と立ち続けることで、これらの筋肉に疲労が蓄積し、肩こりを引き起こすのです。
料理中の腕の位置も重要なポイントです。

まな板で野菜を切る、鍋をかき混ぜるといった動作では、腕を体の前方で保持し続けます。
腕一本の重さは約3キログラムから4キログラムあり、この重さを肩の筋肉で支え続けることになります。
特に三角筋(肩の筋肉)や棘上筋(肩甲骨の上部の筋肉)は、腕を持ち上げた状態を維持するために常に力を入れなければならず、疲労しやすいのです。
掃除機をかける動作も肩への負担が大きい作業です。

掃除機を前後に動かす際、片手でハンドルを握り、もう片方の手で本体を支えます。
この時、肩を前に出した状態で腕を動かし続けるため、肩甲骨周りの筋肉が過度に働きます。
さらに掃除機本体の重さ(3キログラムから5キログラム)を支えるため、腕を下げた状態でも筋肉の緊張が続きます。
ソファの下や家具の隙間を掃除する際には、無理な姿勢で腕を伸ばすため、さらに肩への負担が増加します。
洗濯物を干す動作では、腕を頭より高く上げる必要があります。

腕を上げる動作では、肩甲骨を動かす筋肉や肩のインナーマッスルである回旋筋腱板(肩関節を安定させる筋肉群)が働きます。
洗濯物を一枚一枚干していく間、この動作を何十回と繰り返すことで、肩の筋肉に疲労が蓄積します。
特に高い位置に干す際は、肩が上がりっぱなしの状態となり、僧帽筋上部線維(首の付け根から肩にかけての筋肉)への負担が大きくなります。
拭き掃除やテーブルの片付けなど、同じ動作を繰り返す作業も肩こりの原因となります。
同じ筋肉ばかりを使い続けると、その筋肉だけが疲労し、筋肉内の血流が悪化します。
血流が悪くなると、筋肉に十分な酸素が届かず、乳酸などの疲労物質が蓄積し、痛みやこりを感じるようになるのです。
治療のプロが教える家事の合間にできる5分の肩こり改善メソッド
忙しい冬休み中でも、たった5分のケアを家事の合間に取り入れることで、肩こりを大幅に改善できます。
私が患者さまにお伝えしている、効果的で簡単な方法をご紹介いたします。
まず「肩甲骨はがし」からご紹介します。

両手を肩に置き、肘で大きな円を描くように肩甲骨を回します。
前回し10回、後ろ回し10回を1セットとして、1日3回から5回行いましょう。
この運動により、肩甲骨周りの僧帽筋(首から背中にかけての大きな筋肉)や菱形筋(肩甲骨の間の筋肉)の血流が改善され、凝り固まった筋肉がほぐれます。
ポイントは肩甲骨を大きく動かすことです。
肩甲骨と肩甲骨を背中の中央で寄せるように意識すると、より効果が高まります。
次に「首のストレッチ」です。

椅子に座った状態で、右手で椅子の座面を軽く掴みます。
左手を頭の右側に置き、ゆっくりと頭を左に傾けます。
首の右側が伸びているのを感じながら20秒間キープし、反対側も同様に行います。
これを左右2回ずつ繰り返します。このストレッチは、僧帽筋上部線維(首の付け根から肩にかけての筋肉)や肩甲挙筋(首の横から肩甲骨につながる筋肉)の緊張を効果的に和らげます。
呼吸を止めずに、リラックスした状態で行うことが大切です。
「壁押しストレッチ」も非常に効果があります。

壁から1メートルほど離れて立ち、両手を肩幅より広めに壁につけます。
そのまま腕立て伏せの要領で、胸を壁に近づけていきます。
胸の筋肉である大胸筋と、肩の前面が伸びているのを感じながら30秒間キープします。
これを3回繰り返しましょう。
料理や掃除で前かがみの姿勢が続くと、胸の筋肉が縮こまり、肩が内側に入り込んだ姿勢になります。
このストレッチで胸を開くことで、姿勢が改善され、肩こりの予防にもつながります。
「タオルストレッチ」は、どこにでもあるものを使った効果的な方法です。

フェイスタオルを両手で持ち、頭の上で腕を伸ばします。
そのまま肘を曲げながらタオルを後頭部に下ろし、再び上に伸ばします。
この動作を10回繰り返します。
肩の可動域を広げながら、肩周りの筋肉をほぐすことができます。
タオルを持つことで、腕が自然と正しい位置に導かれ、効果的にストレッチできます。
キッチンで立ったままできる「肩回し」も取り入れましょう。

片方の腕を大きく前から後ろへ、ゆっくりと5回回します。
次に後ろから前へ5回回します。
反対の腕も同様に行います。
料理の合間、お湯が沸くのを待つ時間、レンジで温めている間など、数秒あればできる簡単な運動です。
肩関節を大きく動かすことで、関節周りの血流が改善され、筋肉の緊張がほぐれます。
「呼吸法」も肩こり改善に効果があります。

椅子に座り、背筋を伸ばします。
鼻からゆっくりと5秒かけて息を吸い、口から10秒かけて息を吐き出します。
この深呼吸を5回繰り返しましょう。
深い呼吸をすることで、肋骨が大きく動き、肋骨周りの筋肉がストレッチされます。
また、リラックス効果があるので、全身の筋肉の緊張が和らぎます。
これらの5分間ケアは、朝起きた時、午前中の家事の後、昼食後、夕方の料理の前、就寝前など、1日に3回から5回行うことをお勧めします。
こまめに行うことで、筋肉の疲労が蓄積する前にリセットでき、慢性的な肩こりを予防できます。
まとめ
冬休み中の家事増加による肩こりは、長時間の前かがみ姿勢、立ち仕事、同じ動作の繰り返しという複数の要因が重なって起こります。
しかし今回お伝えした5分間のケアを家事の合間に取り入れていただくことで、肩こりを効果的に解消し、快適に冬休みを過ごすことができるでしょう。
肩甲骨はがしで筋肉の血流を改善すること、首のストレッチで緊張を和らげること、壁押しストレッチで姿勢を整えること、そしてこれらを1日に数回こまめに行うこと。
忙しい中でも、たった5分の積み重ねが大きな効果を生み出します。
ただし、これらのケアを実践してもなお肩の痛みが続く場合や、腕のしびれや頭痛を伴う場合は、単なる筋肉の疲労だけでない問題が潜んでいる可能性があります。
体の歪みや筋肉の深部の緊張、神経の圧迫など、根本的な原因が隠れている場合もあるのです。
そのような場合は、症状を我慢し続けるのではなく、早めに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。
当院では丁寧な問診と検査により、あなたの肩こりの根本原因を探し出し、一人ひとりに合わせた治療プランをご提案しております。
子どもたちとの大切な冬休みを、肩の痛みで台無しにすることなく、笑顔で過ごしていただけるよう、私が全力でサポートいたします。
忙しい毎日だからこそ、ご自身の体を大切にケアしてください。
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(柔道整復師・鍼灸師 森洋人 監修)



