忘年会続きでも運動習慣を維持して腰痛を防ぐコツ

 

はじめに

師走の忙しさに加えて忘年会が続くこの時期、「今週も飲み会だから運動は来週にしよう」と先延ばしにしているうちに、気づけば腰が重く、鈍い痛みを感じるようになっていた。

そんな経験をされている方は少なくないのではないでしょうか。

朝起きる時に「イテテ」と腰に手を当てる、長時間座っていると腰が固まって立ち上がりにくい、そんな症状が出始めているかもしれません。

12月になると急増する腰痛を訴える方に、詳しくお話を伺うと、「忘年会が続いて運動する時間がない」「飲んだ次の日は体がだるくて動けない」「年末の仕事も忙しくてジムに行けなくなった」といったお声を本当によくお聞きします。

実は忘年会シーズンの腰痛には、単なる運動不足だけでない複数の要因が絡み合っています。

飲酒による体への影響生活リズムの乱れ長時間の座位姿勢、そして寒さによる筋肉の硬さなど、様々な要素が重なって腰への負担を増大させているのです。

しかし、忙しい年末だからこそ、効率的に運動習慣を維持する工夫をすることで、腰痛を予防しながら楽しく忘年会シーズンを過ごすことができます。

今回は忙しい年末でも実践できる具体的な方法を、治療の現場で培った知識をもとにお伝えいたします。

 

忘年会シーズンに腰痛が悪化しやすくなる本当の理由を詳しく解説

忘年会が続く時期に腰痛が起こりやすくなる理由は、多くの方が想像する以上に複雑です。

まず理解していただきたいのは、アルコールが筋肉や関節に与える影響についてです。

お酒を飲むと、体内でアルコールを分解する過程で大量の水分ビタミンB群が消費されます。

水分が不足すると血液の粘度が高くなり、筋肉への酸素供給が悪化します。

また、ビタミンB群は筋肉のエネルギー代謝に欠かせない栄養素であり、不足すると筋肉が疲労しやすくなり、腰を支える筋肉の力も弱まってしまうのです。

さらにアルコールは睡眠の質を低下させます。お酒を飲むと寝つきは良くなりますが、深い睡眠が減少し、夜中に何度も目が覚めるようになります。

質の良い睡眠が取れないと、筋肉の回復が不十分となり、腰を支える脊柱起立筋(背骨に沿った筋肉)腸腰筋(腰から太ももの付け根につながる筋肉)の疲労が蓄積していきます。

これが慢性的な腰痛の原因となるのです。

 

忘年会での長時間の座位姿勢も見逃せない要因です。

居酒屋での宴会では、2時間から3時間、場合によってはそれ以上座り続けることになります。

この間、腰椎(腰の骨)には上半身の重さが集中してかかり続けます。

特に座敷での正座や横座り、椅子でも浅く腰かけた姿勢などは、腰椎のカーブを崩し、椎間板(背骨のクッション)への負担を増大させます。

通常の椅子に座っている時でも、立っている時の約1.4倍の負荷が腰にかかりますが、姿勢が悪いとその負荷はさらに増加します。

 

運動習慣の中断による影響も深刻です。

普段運動をしている方でも、1週間運動をしないだけで筋力は約3パーセントから5パーセント低下すると言われています。

特に体幹の筋肉である腹横筋(お腹の深層にある筋肉)多裂筋(背骨を細かく支える筋肉)は、使わないと急速に弱まる性質があります。

これらの筋肉が弱まると、腰椎を安定させる力が失われ、日常の動作でも腰への負担が増えてしまうのです。

 

年末の気温の低さも腰痛に拍車をかけます。

寒さで血管が収縮すると、筋肉への血流が悪化し、筋肉が硬くなります。

硬くなった筋肉は柔軟性を失い、ちょっとした動作でも痛めやすくなります。

特に忘年会帰りの寒い夜道を歩く際、冷えた体で急に動くことは腰にとって大きなリスクとなります。

 

飲酒と運動不足が腰に与える負担のメカニズムと体への影響とは

飲酒運動不足が組み合わさることで、腰への負担は相乗的に増加します。

この関係性を詳しく理解することが、効果的な予防につながります。

まずアルコールが筋肉の炎症反応に与える影響について説明します。

運動をすると筋肉には微細な損傷が生じ、それが修復される過程で筋肉が強くなります。

しかし、アルコールを摂取すると、この修復プロセスが阻害されます。

アルコールは炎症を促進する物質の産生を増やし、同時に抗炎症作用のある物質の働きを抑えてしまうため、筋肉の回復が遅れます

運動習慣が途切れている状態でこれが起こると、腰を支える筋肉の状態がどんどん悪化していくのです。

 

飲酒による体重増加も腰への負担を増やす要因です。

忘年会シーズンは、普段より食事量が増え、さらにアルコールのカロリーも加わります。

日本酒1合で約180キロカロリー、ビール中ジョッキ1杯で約200キロカロリーあり、これに高カロリーな料理が加わると、1回の忘年会で1000キロカロリー以上を余分に摂取することも珍しくありません。

週に2回から3回の忘年会が続けば、短期間で体重が増加し、その分腰への負担も増えます。

体重が1キログラム増えると、腰椎にかかる負担は約3キログラムから5キログラム増えると言われています。

 

運動不足による姿勢の悪化も深刻な問題です。

定期的な運動は、体幹の筋肉を鍛えるだけでなく、正しい姿勢を保つための体の感覚を養います。

運動習慣が途切れると、この感覚が鈍り、知らず知らずのうちに猫背や反り腰などの悪い姿勢をとるようになります。

特にデスクワーク中心の方は、運動しないことで姿勢がさらに崩れやすく、腰への負担が増大します。

アルコールによる脱水も見逃せません。

お酒を飲むと利尿作用により、摂取した水分以上に尿として排出されます。

体内の水分が不足すると、椎間板(背骨のクッション)の水分も減少し、クッション機能が低下します。

椎間板の約80パーセントは水分でできており、この水分が減ると衝撃を吸収する能力が落ち、腰痛のリスクが高まるのです。

 

さらに忘年会後の睡眠不足と運動不足の悪循環があります。

飲酒により睡眠の質が低下すると、翌日は疲労感が残り、運動をする気力が湧きません。

運動をしないことでさらに体力が低下し、次の忘年会でも疲れやすくなるという負のサイクルに陥ります。

このサイクルが続くと、腰を支える筋肉の持久力が低下し、日常生活の中での腰への負担に耐えられなくなってしまうのです。

 

忙しい年末でも続けられる腰痛予防のための効果的な運動習慣術

忘年会が続く忙しい年末でも、工夫次第で運動習慣を維持し、腰痛を予防することは十分に可能です。

私が患者さまにお伝えしている、実践的で続けやすい方法をご紹介いたします。

まず短時間高効率運動を取り入れることが重要です。

忙しい時期だからこそ、1回10分から15分の運動を1日2回から3回に分けて行う方法が効果的です。

朝起きた時、昼休み、就寝前など、スキマ時間を活用します。

 

特に腰痛予防に効果的なのは「プランク」です

うつ伏せの状態から肘とつま先で体を支え、頭から足までを一直線に保ちます。

30秒を3セット行うだけで、腰を支える体幹の筋肉を効果的に鍛えられます。

慣れてきたら、片足を浮かせるシングルレッグプランクで負荷を上げましょう。

ドローインという呼吸を使った体幹トレーニングも、場所を選ばずできるのでお勧めです。

仰向けに寝て膝を立て、息を吐きながらお腹を凹ませ、その状態を30秒キープします。

これを5回繰り返すことで、腹横筋(お腹の深層にある筋肉)を効果的に鍛えられます。

デスクワーク中でも、椅子に座ったまま実践できます。

 

忘年会の日程に合わせた運動計画も大切です。

飲み会がある日は、その日の朝や昼に運動を済ませておきます。

飲酒した直後の運動は脱水や怪我のリスクが高いため避けるべきですが、飲み会の前なら問題ありません。

朝に20分のウォーキングをする、昼休みに階段の上り下りを10分行うなど、小さな積み重ねが腰を守ります。

 

飲酒後のケアも重要です。

忘年会から帰宅したら、就寝前に必ずストレッチを行いましょう。

膝抱えストレッチは仰向けに寝て両膝を抱え、胸に引き寄せます。

腰から お尻にかけての筋肉が伸びているのを感じながら30秒間キープします。

 

また「キャット&カウ」というストレッチも効果的です。

四つん這いの姿勢から、背中を丸めたり反らしたりを10回繰り返すことで、腰椎の動きを滑らかにし、筋肉の緊張をほぐせます。

 

水分補給を意識することも運動習慣の維持に直結します。

忘年会の前後は特に意識的に水を飲み、アルコールによる脱水を防ぎましょう。

お酒を飲む際は、同量の水を一緒に飲むチェイサーを心がけてください。

翌朝も起きたらまず水を飲むことで、体の回復を促し、運動をする準備を整えます。

 

「ながら運動」を日常に組み込むことも効果的です。

歯磨き中にスクワットを10回、電車を待つ間にかかと上げを20回、テレビを見ながらブリッジを30秒など、日常の動作に運動を組み合わせることで、無理なく筋力を維持できます。

特にスクワットは、腰を支える大殿筋(お尻の筋肉)大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)を鍛え、腰への負担を軽減してくれます。

 

まとめ

忘年会シーズンの腰痛は、飲酒運動不足生活リズムの乱れという複数の要因が重なって起こります。

しかし今回お伝えした工夫と習慣を実践していただくことで、忙しい年末でも運動習慣を維持し、腰を守りながら楽しく過ごすことができるでしょう。

短時間の体幹トレーニングを1日に数回行うこと忘年会の日程に合わせて運動の時間を調整すること飲酒後のストレッチを怠らないこと、そして水分補給を意識すること

これらの基本を守ることが、年末を腰痛なく乗り切る秘訣です。

ただし、これらの予防策を実践してもなお腰の痛みが続く場合や、痛みが日常生活に支障をきたしている場合は、すでに腰椎や筋肉に問題が生じている可能性があります。

体の歪みや筋力のアンバランス、過去の怪我の影響など、根本的な原因が隠れている場合もあるのです。

そのような場合は、痛みを我慢して年末年始を過ごすのではなく、早めに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

当院では丁寧な問診と検査により、あなたの腰痛の根本原因を探し出し、一人ひとりに合わせた治療プランをご提案しております。

新しい年を痛みなく迎えていただけるよう、私が全力でサポートいたします。

忙しい年末だからこそ、体のケアを怠らず、健康で楽しい忘年会シーズンをお過ごしください。

腰痛の治療

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(柔道整復師・鍼灸師 森洋人 監修)

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