野球のイップスを克服するために知ってほしい「2つのパターンとその治し方」

こんにちは!
京都市北区 北野白梅町 円町近く もり鍼灸整骨院の森です。

当院では野球肘・野球肩の治療や、野球の投球動作指導などもおこなっており、その中には「イップス」でお悩みの選手もいます。

イップスとは野球やゴルフ、テニス、ダーツ、その他スポーツ活動において、今までできていた動作が思うようにできなくなる状態を言います。

野球であれば、投げるときボールが抜けたり、ボールを落としたり、逆に指に引っかかりすぎたりするなど。

ゴルフではスイングのときに腕や体が固まったり、パターでの力加減が全く分からなくなったり、テニスではボールを打ち返すタイミングが合わなくなったりと、様々な運動障害を引き起こしてしまいます。

当院には野球でのご相談が多く、その度に投球を分析して治療の方法を考えてきました。

そこで今回は、今まで私が診てきて実際に改善した治療や対処法をご紹介したいと思います。

すこし長いですが、実際の治療の経験に基づいて書かせていただいたので、きっとイップスでお悩みのみなさんのお役に立つと思います。ぜひ最後まで読んでください。

イップスを改善する2つのポイント

まず、イップスを改善するためには大事なポイントが2つあります。
それは「メンタル(精神面)」「フィジカル(肉体面)」です。

本やネットでの情報をみるとイップスは「メンタルの問題だ」というのもあれば「フィジカルの問題だ」という方もいらっしゃいます。

私の考えではそのどちらも正しいし、どちらも間違っているのではないかと思っています。

なぜならこの両者は共存している、いわいる「メンタル=フィジカル」だと考えているからです。

なぜ私がこのように考えるようになったかというと、イップスになる「2つのパターン」があることに気が付いたからです。

パターン①「メンタルに原因がある場合」

まず1つ目のパターンはメンタル、つまり精神的な問題がきっかけで起こるものです。
例えば、ピッチャーがデッドボールを当てたことがきっかけで恐怖心が生まれるとか、試合での過度な緊張やストレスが発祥の原因になってしまうものです。

精神的な問題が第一の問題となると、急激に感覚が乱れてしまいますので、「急におかしくなった」「急に投げられなくなった」と感じることが多いようです。

この場合、
『メンタル→フィジカル→イップス』
という関係になります。みなさんがイメージされるイップスはこのパターンなのではないでしょうか。

パターン②「フィジカルに問題がある場合」

パターンの2つ目はフィジカル、つまり肉体的な問題がきっかけで起こるものです。
例えば、ケガをしてフォームを崩したり、意図的にフォームを変えたり、成長期の問題で身体が硬く身体感覚のずれが生じたり、体の基礎的な使い方ができていない場合などです。

このようなきっかけの場合、初めは少し感覚がおかしいなと感じる程度でしょう。しかし感覚のずれは少しづつ大きくなり、次第に修正ができなくなる。

すると、こんなはずではない…なんだかおかしい…何で思うようにできないんだ…と、精神的なダメージも加わりながらどんどん体を思うように動かせなくなります。

この場合、
フィジカル→メンタル→フィジカル→メンタル→フィジカル…

このように徐々にイップスに陥ってしまいます。「徐々におかしくなってきた」という選手はこれに当てはまります。

2つのパターンで異なる対処法

⒈メンタルが主な原因の対処法

まず、メンタルが発症の大きな要因である場合、早期かつ適切にメンタルのケアができれば、克服できる可能性は高いです。
この場合のみ、メンタルとフィジカルは共存せずにメンタルケアだけで改善できると考えています。

トップレベルの、フィジカルに問題の無い選手はこのパターンが多いのではないでしょうか。

重要なことは、早くに適切な対処を受けるということ。対処が遅れると、悪い身体の動きを脳が記憶してしまいます。
脳が悪い動きを記憶すると、条件反射のように投げられなくなってしまいます。

練習のマウンドであれば投げられるけど、「打者が立つ」「試合」というようなある条件下では投げられなくなる人がいます。これもいわば条件反射のようなものです。

条件反射は学習記憶です。

長い間その悪い状態でいると脳がそれ記憶してしまいます。ここまで来ればフィジカルにも重大な問題が出てきます。

そうなればメンタルケアだけでは克服できません。新たな学習記憶を作り、条件反射の解除を行う必要があります。

新たな学習記憶を作るために必要なことは、動作を正しく学習し、そしてフィードバックをおこなうことです。
(フィードバックとは意識した動作で体がどのように変化したかを確認すること。指導者の指摘をもらったりビデオを分析したり)

このように正しい投球動作を学び、少しずつ身体感覚を取り戻していきます。

すると、今までできなかった動作がとれるようになり自信がついてきます。自信がついてくるとメンタルも安定します。

出来なかったことができるようになったという、「小さな成功体験」を積み重ねましょう。

⒉フィジカルが主な原因の対処法

フィジカルが発症の原因となっている場合は、体のどこに、どの動きに問題があるのか?を把握しなければなりません。
当院で治療した2例のイップス患者さんで説明します。

『成長期に対応できず、間違った指導を受けていた高校生の例』

ある高校生のピッチャーは、中学3年の時にイップスを発症しました。当時身長が伸びていたため、自分でも2年生の頃よりも身体が硬くなっていることを自覚していたようです。

思うように投げられないでいると、監督から肘を上げるようにと指導を受けたとのこと。しかし思うようなピッチングができず、そのうちストライクも入らなくなったそうです。

次第にプレッシャーを強く感じるようになって、高校に入る頃には人前では全く腕に力が入らず、ボールがすっぽ抜けたり、時には指からボールが離れなくなる状態にまでなっていました。

この選手の場合、成長期の体の変化に対応できなかったことと、肘を上げろという間違った指導に原因があると思われます。

肘が下がってきたのは、きっと体の変化でフォームが崩れていたのでしょう。初期段階の対応が大切だと感じた症例です。

『体の使い方が悪く技術に限界が出てきた高校生の例』

ある高校生は中学生のころまではそこそこのピッチャー。強豪校に進学すると、周りのレベルは高く必死に練習をしたり、ピッチングフォームも試行錯誤したそうです。

しかし次第に自分の投球フォームが分からなくなって、投げていると自分の腕じゃないように感じると語っていました。

この選手の股関節の使い方をみると、驚くほど悪かったです。股関節が硬いだけでなく、スクワットなどの基本的な動作もうまく作れません。

きっと中学校までは基礎的な動作がとれなくても、上半身の力でそれをカバーしたり、ある種のセンスでそれをカバーできていたのかもしれません。

しかしそれ以上の成長には基礎的な動作や体の使い方が必要なのです。

基礎(体の使い方)が弱ければ、その上に乗せることのできる技術には限界があるのではないかと私は考えています。

このような選手は投球フォームなどの技術的な問題にフォーカスすると余計に悪くしてしまう傾向があります。

細かい技術よりも基礎動作をしっかりとトレーニングすることが大切です。

この2例の選手からわかることは、明らかにフィジカルの問題からメンタルに影響が及んでいます。

この場合はメンタルのケアだけでは改善しません。

フィジカルのどこに問題があってどのように改善すれば良いのか本人にもしっかり理解させ、改善を図れば本人はとても安心します。

安心するとメンタル面も改善し、よい循環になっていきます。

このようにメンタルとフィジカルは深い関係があります。

これが両者は共存している、いわいる「メンタル=フィジカル」だと私が考えるようになった理由です。

メンタルを改善するためには「安心」を作る

不安はストレス反射を引き起こし、交感神経を緊張させ筋肉を硬くします。これが条件反射的に起こるのがイップスです。

メンタルを改善するために一番大切なことは「安心」してもらうことだと私は考えています。

まずはイップスになった心理的、肉体的な原因を突き止めて理解してもらうことが重要です。なぜそうなったか本人がきちんと理解しなければ不安は払しょくできないでしょう。

そして周りの人が安心できる場を作ってあげると。

家族や監督やコーチも野球を楽しめるような安心できる場を作るよう心がけていただければと思います。

小さな成功体験の積み重ねが自信に

出来ないことができるようになったという小さな成功体験を積み重ねることで自信がついてきます。

・関節の可動域が良くなった
・股関節の使い方がうまくなった
・ボールが抜けにくくなった
・回転が良くなった

などなど小さなことでも構いません。

ただ自信をつけさせるためにウソをついて褒めるのだけはやめてください。

へんに勘違いしてしまい、悪い状態を繰り返しどんどん不安になっていくだけです。小さなことでも確かに良くなっていると思うことを探して褒めてください。

フィジカルを改善するポイント

野球であれば、股関節と肩甲骨の柔軟性、股関節の使い方が大切だと考えています。

股関節の使い方というと難しく聞こえますが、例えばスクワットやサイドランジ、ジャンプ系のトレーニングなどは股関節の使い方が悪いと苦手なはずです。

そのようなトレーニングを正しい動作で行う練習をお勧めします。

選手のご両親や指導者の方へ

イップスを改善しようとするときに、今起きている現象だけを指摘しても改善は難しいです。

例えば、手首を柔らかく使え、腕の力を抜け、下半身を使え、力むな、など。

選手はそれができなくて困っています。

なぜそうなってしまったのかを、選手の過去の経験を聞いてメンタル的な要因はないのか、体の動きや柔軟性に問題がないのか?などできるだけそうなっている原因を考えてあげてください。

もしも原因がわからない場合は、メンタルやフィジカルの専門家に相談してみましょう。

当院でもイップスの治療をおこなっています。早めに対処することが早期改善には欠かせませんので、何かあればお早めにご相談ください。

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(柔道整復師・鍼灸師 森洋人 監修)

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